第9回 リーガルテックの正しい利用方法

コラム特別編でも解説したとおり、2023年8月1日にリーガルテックを適法とする法務省ガイドラインが公表された。この機会に、リーガルテックの正しい利用方法についてユーザーの皆様の理解を確認し、多くのユーザーの皆様がリーガルテックを有意義に活用する一助としたいと考える。すなわち、リーガルテックは、うまく利用すれば、大変有意義で、法律事務所や法務部門の業務の効率化や高度化につながるが、利用方法に誤解があれば、むしろマイナスになりかねないものである。
最も重要な点は、「リーガルテックは弁護士・法務担当者の仕事を代替するものではない」ということである。リーガルテックを導入したことで、もう後はリーガルテックが仕事を代わりにやってくれる、もう弁護士も法務担当者もいらない、等と誤解をされてしまうと、これではマイナスの方が大きくなってしまう。当職自身はまだ経験がないが、SNS等では、契約レビューAIの表示した「修正文例」にこだわり、「リーガルテックがこう言っているからこのとおり修正して欲 しい」という相手方法務担当者がいる等という話が(現実の話としてなのか、もしこういうことがあったら困るという趣旨かは不明であるが)流れてくることもある。ここで、協会代表理事として、「そのような使い方は間違いである」と大きな声で言いたいところである。
リーガルテックはあくまでも補助的な位置づけで、弁護士・法務担当者の仕事を支援するものに過ぎない(松尾剛行『ChatGPTと法律実務』(2023年、弘文堂)参照)。例えば、契約レビューであれば、契約書をチェックする上で「一般的に留意すべき事項」を示してくれる。そこで、一般に留意すべき事項の見落としを防ぐ等の大きな意味はある。しかし、あくまでも「一般的に留意すべき事項」に過ぎない以上、「その取引においてこの契約を締結するにあたって、本当にこの文言でなすべきリスク管理ができるのか?」(松尾剛行『キャリアデザインのための企業法務入門』(2022年、有斐閣)参照)という点については、なおユーザーである弁護士・法務担当者の方で考え、確定していく必要があるのである。法務省ガイドラインがリーガルテックを適法にしたのも、このように、リーガルテックが法務の高度化・効率化に繋がる有意義なものであるが、同時に支援・補助的な位置づけであり、弁護士の仕事を奪うものではない、という点を踏まえたものと考えられる。
リーガルテック各社は、利用方法について営業担当者等から説明を行なっており、ユーザまたはその候補である弁護士・法務担当者の皆様は積極的にそのような説明の機会をご利用いただきたい。また、協会においても、ユーザーの皆様にリーガルテックの正しい利用方法を理解していただけるよう、啓蒙活動に努めて参りたい。
 

 
賛助会員には以下のコンテンツが配信されます。
  • 理事から一言
  • 総会理事会
  • 業界の動き
  • 事務局からのお知らせ
  • NEWS