第20回 ステマ規制に対する対応
ステマ規制に関する注目が高まる中、ステマ規制に関する論稿が公刊され、インタビューが公表された。
松尾剛行「企業の社会的責任と広告宣伝における注意点」ビジネスガイド2024年2月号66頁は、特にステルスマーケティング規制を念頭に、企業が近時、広告宣伝において何に留意すべきかをまとめたものである。
また、弁護士ドットコムの運営する企業法務向けプラットフォーム「Business Lawyers」において、「重要なのは消費者視点 – 『広告法律相談125問』著者 松尾 剛行弁護士に聞く、ステマ規制等の最新動向と法務の心構え」という記事広告を掲載頂いた。これは、 松尾剛行 『第2版 広告法律相談125問』(日本加除出版、2022年)及び松尾剛行『実践編 広告法律相談125問』(日本加除出版、2023年)が相次いで刊行されたところ、これらの書籍が必要とされる背景としてのステマ規制等近時の広告に関する法令の改正とそれに対する実務対応等をインタビュー頂いた記事である。
このような寄稿が依頼され、また、記事広告が掲載されるに至った背景には、ステマ規制が実務上重視されていることを指摘できるだろう。即ち、インフルエンサーマーケティングや、SNSマーケティングが重要なマーケティング手法となり、B2C企業はもちろん、B2B企業も含む多数の企業がその宣伝広告手法としてこれを利用するところ、そのような手法について2023年9月末までは部分的そして間接的に規制されていたものの、直接的かつ包括的規制がなされていたとは評することはできなかった。この点については、「消費者庁の姿勢は、ステマそのものが直ちに景表法違反ではないが、その方法によっては不当表示になると総括できよう。」と2022年当時のステマを取り巻く法律問題を総括した 松尾剛行 『第2版 広告法律相談125問』(日本加除出版、2022年)210-211頁を参照されたい。
2023年10月に、ステマに関する直接かつ包括的な規制が導入された。その趣旨は、消費者としてそれが広告と分かればその分身構え、ある意味では多少の誇張はあるものとして「割り引いて」理解するが、それが広告ではなく、例えばインフルエンサーの個人的な見解ならばそのような身構えをすることなく鵜呑みにしかねないので、広告(事業が行う表示)ならその旨を明瞭に示すべきということである。
まず、そもそも事業者が第三者、例えばインフルエンサーの表示内容の決定に関与しているか(「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であるか)が問題となる。
そもそもインフルエンサーが完全に自発的に良いと思ったものを勧めているなら、ステマ規制はかからない。
次に、仮に事業者が第三者、例えばインフルエンサーの表示内容の決定に関与し、それが広告と評価されても、そのような表示が禁止されるのではなく、単にそれが広告であることを「広告」や「PR」と記載すること等を通じて明瞭に表示すれば良いだけである。
実務上は、運用基準やパブコメが重要である。是非これらを生かしながら、適切なインフルエンサーマーケティングや、SNSマーケティングを行って頂きたい。
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