第1回 弁護士業務におけるChatGPTの利用について
ChatGPT等の大規模言語モデルが話題となっており、筆者もアカウント登録をして利用してみた。インタラクティブにやり取りができ、「もっともらしい」回答をすることが面白く、たちまち1時間以内に可能な質問件数を超過してしまった。将来的には弁護士業務において、校正・翻訳、要約、リサーチ、ブレスト(壁打ち)、文書作成等における利用が考えられるだろう。
ここで、現時点では英語(主に米国)以外の文章や、インターネット上にはない文献(書籍、雑誌論文等)を利用した学習量が少なく、また、2021年以降のデータが少ないこと等により、日本の法律情報や(米国であっても)最新情報については大きな制限がある。とはいえ、これは今後の学習対象の拡大等で徐々に解決していくだろう。
ここで、より重要なのは、回答は非常に「もっともらしい」ものの、「誤り」を多く含むという点である。すなわち、弁護士がその質問に回答するのであればこのような「雰囲気」で回答するという能力については極めて優れているが、あくまでも雰囲気だけであって、正確性については大きな問題がある。例えば判決を要約させると、確定している判決なのに、「本判決に対しては控訴がされており、現在控訴審で審理中である。」等が出てくる。大量に学習したケース・サマリーにこのような文章が頻繁に出現したので、この1文を加えることで、より「本物らしくなる」と考えたのだろう。この点は、学習の進展や一定以上の確信度に至らない場合の「分からない」との回答、関連資料の提示(現時点では存在しない文献を提示することは有名であるが今後は正しい文献を提示するようになるだろう。既にBingAIやPerplexity AI等は根拠を示しており、その根拠は十分ではないものの、今後の技術の発展が期待される。)等の技術の発展によってある程度解決することが期待される。
しかし、いかに技術が進展しても、機械学習技術を利用していること、つまり、大量のデータを学習させ、関連・類似する事項についてそれらのデータにおいて「だいたいどのように回答されているか」を踏まえて「もっともらしい」回答を提示するという本質に変わりがない限り、今後もその技術的限界による誤りは引き続き出現するだろう。だからこそ、ChatGPT等の技術が発展しても、弁護士等の一定以上の専門知識を有する人間の利用者が批判的に検証しながら利用していく必要があることには変わりがないと考える。
このようなChatGPTと法律実務に関し、この度弁護士の先生や法務関係者の方を対象とした、LegalOn Technologies様主催の「LegalForce Web Seminar最新AI技術と法務実務への影響~弁護士と企業法務がChatGPTを考える~」に登壇させて頂くことになった。以下のURLから申し込みが可能であり、奮ってご参加頂きたい。
以上
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