第12回 この数ヶ月で法律・法務とChatGPT・AI・リーガルテックの何が変わったか
1 はじめに
ChatGPT・AI・リーガルテックの特徴は短期間で状況が変化していくところである。筆者は2023年6月末の状況を基に、同年7月末見本刊行、同年8月書店配布というスケジュールで『ChatGPTと法律実務』(以下「本書」という。)という書籍を弘文堂から出版させて頂いたが、既に本書の内容の基準日(ChatGPT的に言えば、「カットオフデート)から3ケ月が経過し、本書の前提としていた内容にいくつかの変更が生じている。そこで、以下最新状況を概観することで、本書の読者の理解を助けると共に、ChatGPT・AI・リーガルテックにご興味をお持ちの皆様のお役に立ちたい。
2 新機能・新サービス
文書生成AIとの関係では続々と新サービスが登場している。以下いくつかの機能・サービスに関するニュースを挙げよう。
- 2023年7月3日 ChatGPTのWebBrowsing機能を停止
- 同月10日 OpenAI社がCode Interpreter(現Advanced Data Analysis)のベータ版をリリース。
- 同月17日 GoogleBardにマルチモーダル機能搭載。 同月18日 MetaがLlama2を商用利用可能なオープンソースモデルとして公開
- 同年8月30日 OpenAIがChatGPTエンタープライズ発表
- 同年9月7日 MicrosoftがCo-pilotにおける権利侵害に対する対応を発表
等
3 ChatGPTの組み込み
これまでも、AIを利用してデータ分析を行うこと自体はできた。但し、文章生成AIを1分析等の指示を対話形式で行うことができること、2対話形式で分析結果について確認ができるという部分が重要である。
とはいえ、プロダクトの組み込みは現時点では、ChatGPTに入れて分析をさせることができるデータ量との関係で、裏で検索を掛けて、検索して出てきた関係しそうな部分をChatGPTに入れて出力させるといった形が現実的である
このような方向性が続くのか、新しい展開になるのかも含め、引き続き注視したい。
4 現行法の解釈とルールメイキング
国際的には、2023年8月15日に中国でAI規制が施行され、G7広島AIプロセス 閣僚級会合(同年9月7日)において、AI開発者を対象とする国際的な行動規範の策定が国際社会の喫緊の課題として、その方針が示された。
また、日本においても、著作権法を含む現行法の解釈とルールメイキングが行われている。例えば、文化審議会著作権分科会法制度小委員会では2023年7月26日と同年9月5日に議論がされており、「AI時代の知的財産権検討会」も同月頃開催される。
個人情報について『ChatGPTと法律実務』でも触れた2023年6月2日の注意喚起に続き、同年8月のPPCのパンフレットが「入力する情報が、生成AIサービスの提供者においてAIの学習データとして利用されることが予定されている場合には、利用者(個人情報取扱事業者及び行政機関等)には以下の規律が課されます。このため、利用規約を確認するなどした上でサービスを利用するようにしてください。」として「以下の規律」として個人データ第三者提供等の規律が挙げられている。
5 法務省ガイドラインと協会ガイドライン
更に、リーガルテックについては法務省が2023年8月1日に「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について(法務省ガイドライン)」を公表した。これにより、契約レビューテクノロジーを含むリーガルテックサービスが適法に提供されることが確認された。当職の、当協会代表理事としての法務省ガイドライン解説がNBL9月1日号に掲載された。
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